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自殺を予防する薬はあるのでしょうか?

質問No20:自殺を予防する薬はあるのでしょうか?

身内がうつ病で自殺の危険性があるのかと思うと心配です。何か薬などで自殺を予防する方法はあるのでしょうか?

回答

自殺の予防に関しては様々な薬が検証されていますが有名なところだとリチウムでしょうか。リチウムの自殺予防に対しての研究は色々とされています。

リチウムは躁うつ病(双極性障害)やうつ病の治療薬としても使われますが、水道水にも微量含まれておりどちらともに自殺の予防効果があるのではないかと言われています。それでは最近のレビューを紹介します(Matto 2020)。

まずは飲料水についてです。大分県での各市で調べた報告ですが、飲料水中のリチウム濃度(0.7-59μg/L)が自殺率を低下させることが明らかになりました(β=-0.65, p < 0.004) (Ohgami 2009)。またオーストラリアなどでも同様の効果が報告されています(Kapusta 2011)。この他にも多く水道水のリチウムと自殺の予防効果との報告がなされています。一方でイギリスやデンマークなどで行われた他の研究ではあまり関連しないのではないかといった報告もあります(Kabacs 2011; Knudsen 2017)。ただここでは飲料水のリチウムの範囲が低いことが理由なのではないか?と言われています。

次にうつ病や躁鬱病(双極性障害)の治療にリチウムを内服するのでそれについての報告を見てみます。

7年間予防的に362人に気分障害の方にリチウムを投与した研究では投与しない群の方が4.8倍ほど高いという結果でした(Nilsson 1995)。406人を44年間追跡した研究でもリチウムの予防投与群の方が自殺率は3倍ほど低いことがわかっています(Angst 2005)。などなど他にもいくつもこのような報告があります。93335人の患者群(リチウム投与群21468人)を9年間追跡してみたところリチウムを中止、もしくは、変更した後半年以内に自殺のリスクが増加することが報告されています(Smith 2014)。

ただ、エビデンスレベルが高い二重盲検RCTで検討したところでは、自殺の発生数が少ないこともありあまり有意な結果となっていないことも多い(Khan 2011; Oquendo 2011; Kleindienst 2000)。

また、過去のカルテなどを調査した後ろ向き研究もいくつかあります。20623人の双極性障害患者(7121人がリチウムを服用)を対象に調べたところリチウム投与中では有意に自殺のリスクが低いことがわかりました(他の薬だとリスクが1.5倍から3倍ほど高い)(Goodwin 2003)。デンマークで行われた6年間の後ろ向き研究では、5926 人の双極性障害の患者を対象にみたところリチウムへの切り替えもしくはリチウム追加群が有意に自殺率を0.28に下げていたという報告もあります(Sondergard 2008)。

今回紹介したもの以外にもいくつもレビューやメタ解析の報告があり、リチウムには自殺予防があるとしています。ただ自殺は発生件数が少ないので中々介入研究もしにくいという実情もあります。例えば100人集めて前向きに研究しようとしても自殺者が1名とかだと正しい検証は困難ですよね。

そのため、ひとつひとつの研究のエビデンスレベルはそこまで高くないものが多いという点は今後の課題点でしょうか。

もちろんリチウム以外にも環境調整など自殺を予防する方法はあるため、多角的に対策をしていくことが大切です。

最近の自殺の話題についてAJPの10月号で自殺特集が組まれており、その特集にコロンビア大学のJohn Mannの総説が載っておりました。その最新の総説ということで現在の自殺についてはどこまでのことがわかっているのかを知ることができると思うので簡単に紹介します。...

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