リチウムは自殺以外にも認知症の予防にもなるのでしょうか?
微量のリチウムは自殺以外にも認知症の予防にもいいのではないかと近年言われています。

例えば、45人ほどの軽度認知障害の高齢者を対象として低用量のリチウムとプラセボとに分けたところ、リチウムを内服した軽度認知機能障害の方は認知機能が低下しにくくなったという報告がありました(Forlenza 2011)。一方で認知症を発症した後でリチウムを投与しても認知機能の改善は認められなかったようです(Hampel 2009)ので、発症する前でないとリチウムは効果がないかもしれません。
また、デンマークで50歳から90歳の認知症患者73731人と対照群733653人を対象にその住んでいた地域の水道水にどの程度リチウムが含まれていたかを調査した大規模な面白い研究があります(Kessing 2017)。
その結果、摂取していたリチウム濃度は認知症患者(中央値で11.5 µg/L)で低く、認知症を発症しなかった群(中央値で12.2 µg/L)では高かったと統計的にも有意でした。この結果から水道水から摂取したリチウム濃度が高ければ認知症の予防になるかもしれないと言えそうですね。もちろん、リチウムは野菜などにも含まれており、各個人どのような食事をとっていたかわからないため、課題は残りますがこれほどの大規模での検証であるため面白い結果だと思います。
また、特に15µg/L以上の濃度のリチウムを含む地域では認知症の発症率が低いとなっています。一方で面白いことに濃度が低ければ単純に発症率が高くなるわけではなく、4 μg/Lで一番発症率が高くそれより低くなるとまた発症率は若干下がるという非線形です。なぜこのように非線形な結果になるのかについてはよくわかっていません。
このようにまだ報告は少ないもののリチウムには自殺や認知症を予防する可能性があるため、何らかの脳の神経保護作用があるのかもしれません。興味深いです。