先日、昨年の自殺者よりも今年の自殺者が40%増加でコロナ(COVID-19)の影響かというニュースが話題になりました。

コロナによって精神疾患やメンタルヘルスなどにどのような影響があるのかは懸念されるところです。
実際、私の外来や入院病棟でもコロナが影響と思われるような患者さんが増えているような感覚はあります。
自分がコロナに感染しているのではないか?と妄想性うつ病となってしまったおばあちゃん、や、コロナで学校がなく引きこもりになって外に出られなくなってしまった高校生などなどたくさんあります。
また、元々うつ病で通院していて安定している方でコロナによって趣味のダンス教室などに通えなくなってしまったことが引き金でうつ病が再発してしまった方もいました。
病院に行くとコロナに感染するのではないか?と怖くなり通院が十分にできずに薬も怠薬気味になり悪化した方もいます。
実際データでもどうなのかについては、先週アメリカでLancet Psychiatryに報告された論文があるので簡単に紹介します(Taquet M 2020)。
アメリカでもコロナが流行り始めた頃より、コロナ感染が精神疾患に与える影響や元々精神疾患のある方への影響というのは心配されていました。
以前の報告でもコロナウイルス感染はせん妄、不安、抑うつ症状、躁症状、記憶力低下、不眠等を引き起こす可能性があることが示唆されています(Rogers JP 2020)。また、アメリカでの過去の調査によるとADHD、気分障害、統合失調症の患者さんではコロナに感染する確率が高いことがわかりました(Wang Q 2020)。
この論文の調査ではアメリカの54箇所の医療機関、合計6980万人の膨大なデータを元に解析しています。
まず、第一にコロナ感染後に精神疾患が発症するのかどうかについての調査です。
COVID-19と診断された後の14日から90日の間に精神疾患の診断を受けた人がどの程度いるかどうかを見ています。
まず、62354人がコロナ(COVID-19)に感染し、診断を受けています。この中で44779人の方が過去に精神疾患の診断を受けていなかったため解析に含めています。
これらの方はその後、90日以内に精神科の受診を受ける人は5.8%ほどおり、コロナに感染していない人に比べて2倍ほど高かったそうです(ハザード比:HRは1.58~2.24)。比較群としてインフルエンザに感染した人と比べていますがそれよりも有意に高いというので何かに感染したから精神疾患にかかりやすくなるというわけではなさそうです。

精神疾患の中では特に不安障害での受診が多く(HR 1.59-2.62)、その次はうつ病です。なお、統合失調症などの精神病と診断される人はコロナの感染後に特に多いということはなかったそうです。
また、コロナ感染後に不眠症の患者も増え、65歳以上では認知症と診断される人の割合も感染していない人たちに比べると若干増えたそうです(HR 1.89-3.18)。
環境による要因などもあるのではないかとこの論文では更に解析されていますが、人種や経済状況や住所などによっても特に変わりはないようでコロナの感染による影響がやはり大きいのではないかと述べられています。
また、コロナの感染の中でも入院を必要としたコロナに感染した患者は、入院を必要としなかった患者に比べてその後の精神疾患のリスクが高かったようです(HR 1.40)。
次にコロナ感染前に精神疾患を元々持っていた方がコロナに感染しやすいかどうかについて調査しています。元々精神疾患の診断を1年以内に受けていた方は65%ほどコロナの感染のリスクが高かったようです(特に高齢の方)。精神疾患の種類によっての差はそこまでなかったようですが、統合失調症のような精神病ではより高かったそうです。
これらの報告からコロナに感染した後は精神疾患にもかかりやすいことがわかります。特に不安障害やうつ病などが多いようですが、コロナ感染が直接脳に影響を与える可能性も否定はできませんがどちらかというとコロナや死への恐怖や周りからの差別などもあるのかもしれません。
いずれにせよ精神疾患の受診者は増え、自殺者も増えているということから感染後のサポートも重要そうです。
[…] コロナ(COVID-19)感染による精神への影響について実際、私の外来や入院病棟… […]