ここ最近、コロナの影響もあり外に出ずに孤独に家で過ごす人が増えてきているといいます。その影響もあってかコロナの影響で体調を崩す人が増えているように実際の臨床では感じます。
実際にこれまでも孤独感とうつ病との関連はこれまでも多く言われてきていました(Erzen E 2018)。

これは感覚的にもわかりやすいですよね、孤独になると気持ちが落ち込むこともあるので。しかし、実際のところ本当に孤独がうつ病を生み出すのでしょうか?
これまでの孤独とうつ病との関連についての研究のほとんどが横断研究(ある一時点での調査)でした。なので、孤独とうつ病との関連はどちらが先にあるのかはわかりません。
ニワトリが先か卵が先かと同じで、うつがあって孤独になったのか、孤独があってうつになったのかの因果関係は証明困難でした。
孤独からうつ病になるという因果関係を調べるためには、まず孤独があってそれを追っていくことでうつ病になりましたということを証明しなくてはいけません。これまでも、そのような追跡した研究はあるにはあったのですが、人数が少なかったり長期間追っていなかったりであまり一貫した結果が得られていませんでした。
そのような中、これにひとつの答えを与えてくれる面白い論文が先日でました。孤独感がある方が後にうつ症状を呈するかというロンドン大学(UCL)で行われた大規模かつ12年追った壮大な研究が報告されたので紹介します(Siu Long Lee 2020)。
ここでは、50歳以上の4211人(女性は55%)を対象としています。最初のスタート時点でもすでに孤独感の高い人ほど抑うつ症状は強く、特に年齢が高い女性、未婚、無職、学歴や資産が低い人の割合が高かったそうです。逆に孤独感が低い人は結婚しており、裕福であり、体が健康である人たちのようです。
その後、追っていくと孤独感の点数(1点増えると)の増加は、すべての期間にわたって抑うつ症状の点数(0.38点)も増えていったようです。なお、抑うつ症状は2年後も12年後も続いていたようです。
この増加は多遺伝子リスクスコアや他の因子を調整しても変化はなかったようです。なので純粋に孤独感が増せば、抑うつ症状は悪化すると言えそうですね。
なお、より細かい点を見るために孤独感と抑うつ症状の多遺伝子リスクスコア(PRS)、年齢、性別、人種、婚姻状況、教育レベル、仕事、資産、体の病気があるか、運動機能、痛み、体格、認知機能、もともとの気持ちの落ち込みなどなど影響されそうな様々な要素も影響を与えているかもみています。
ここで孤独がうつ症状の原因となるメカニズムとしては以下の3点が述べられていました
- 孤独は警戒心が強くなったり物事に否定的・悲観的になったりする
- 孤独は自分自身に対しても悲観的・批判的になりやすい
- 孤独は免疫力の低下からうつ病にもなりやすいのではないか