境界性パーソナリティ障害は遺伝するのでしょうか?素人の私がネットや本などで調べた限りではどちらとも言えないようなことが書かれておりはっきりわかりません。環境要因であったり遺伝であったりと。また、もし遺伝するのであれば早めに対策を取れば防ぐことはできますか?何か予防する手立てがあるのでしょうか?
境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害:BPD)は遺伝の影響も環境要因の影響もどちらもあるというところが答えでしょうか。
まず遺伝についてですが、これは双子研究などで大体40%ほどが遺伝するのではないかということが一貫して報告されています。
ひとつ有名な研究を紹介します。これは、スウェーデンで1973年から1993年に生まれた約180万人の子供を対象にしており、15歳以上で境界性パーソナリティ障害(BPD)の方がどれだけいたかを見ています(Skoglund 2019)。
その結果、約180万人中、約1万2千人(0.6%)がBPDと診断されその多くが女性(9900人)でした。また、BPDの7割に不安障害、3割にADHDなどを併存しており、BPD全体の約半数が自傷行為を行っていました。
これらに関しては全く別の病気が合併したというよりBPDの症状の一部が不安感だったり自傷行為だったりという捉え方の方が正しいかもしれません。
詳細に兄弟感ではどう違うかというと、一卵性双生児ではハザード比(HR)11.5と兄弟姉妹でBPDである可能性が高いことが示されました(厳密には違いますが、イメージとしては11.5倍BPDになりやすいのだという感じです)。二卵性双生児では7.4、双子ではない兄弟姉妹では4.7と少し下がりますまた、異父兄弟では2.1、異母兄弟では1.3とさらに下がります。これは父親または母親からの遺伝の影響もありそうですね。
遺伝についてまとめると、この検証では、BPDの遺伝率は46%ほどとなっており、残りは種々の環境因子ではないかとなっています。別の報告でも大体40%ほどとなっています(Kendler 2008)。
また、環境因子については複雑でまだまだ未知な部分も大きいが幼少期の虐待やネグレクトはリスクのひとつと言われています(Johnson 1999)。その他にも5歳前後の早い時期に母親と離れてしまうことや家族の不仲、ストレス自体、経済的に厳しいこともリスクとされています(Andrew 2013)。子供の時にADHDや行動障害、反抗挑戦性障害があることもBPDの強いリスク因子だそうです(Stepp 2012)。リストカットなどの自傷行為をしている場合もリスクです(Zanarini 2006)。
では最後にBPDの予防についてですが、これは難しいところです。そもそも前項で述べた虐待やストレス、経済状況などもかなり大規模な介入が必要であったり、これらのリスク因子はBPD特有のものではなくうつ病や解離性障害などでも同様にリスクであったりするので検証しにくい面があります。
そのためはっきりとしたどうしたら予防できるかというお答えはできません。
また、BPDが突然発症する病気というよりかは性格の偏りとも捉えられるところも検証を難しくしている要因です。
ただ、リスク因子はわかっているのでそれをしないよう「(当然ですが)虐待はしない」「家族は仲良くしストレスのない環境で育てる」といったことは意識しておいてもいいかもしれません。