うつ病は休養や抗うつ薬治療などで一度改善した後も中々いい状態が続かずに症状が残っており、再発してしまう場合が少なくありません(Fava 1991)。
下絵のうつヌケ(田中圭一 2017)の漫画にもあるように昔の自分に戻れず休職、復職を繰り返してしまう方が多くいます。

そのため再発をいかに抑えるか?はうつ病の治療に非常に大切です。以前、抗うつ薬の再発予防について書きました。

ここでは抗うつ薬はある程度続けたほうが再発予防になりますという話でしたが、カウンセリング、認知行動療法、マインドフルネスなどの心理療法はどうなのかについては述べませんでした。心理療法についてはどうなのでしょうか?
このような状況を防ぐために抗うつ薬で症状がある程度改善した後に認知行動療法やマインドフルネスなどの精神療法を行なった場合に再発の頻度は少なくなるのか?ということに対して一つの興味深い報告がなされました。
これは2020年11月25日イタリアのボローニャ大学からJAMA Psychiatryで報告されたメタ解析です(Guidi J 2020)。
このメタ解析では、抗うつ薬で症状が改善(電気痙攣療法などは除外)したうつ病の方を対象に、その後に心理療法を行う群とそうでない群のランダム化比較試験を元にその再発率をみた報告です。その間は抗うつ薬を継続していてもやめていてもどちらでも良い。
このメタ解析では17の論文、計2283人の参加者(治療群1208人、対照群1075人)が解析対象に含まれています。大体1年ほど追っています(短いと7ヶ月長いと10年)。
この結果、うつ病の症状が改善した後、認知行動療法などの心理療法を行った場合は再発のリスクがリスク比で0.83(95%CI、0.74-0.94)となり、有意に再発を抑えられる効果があるという結果になりました。

この17件のうち、6件の研究は症状改善後には抗うつ薬をやめて心理療法のみでしたが、これは改善後に抗うつ薬のみ使用し続けるよりも再発予防効果があることがわかりました。なお、リスク比で0.86(95%CI、0.71-1.0)です。
このように改善後は抗うつ薬よりも心理療法のみの方が再発率も低いという結果は面白いですね。
また、それだけではなくて、急性期の薬物治療によってうつ病の症状が改善した場合、その後の心理療法によって幸福度が高まったり、抗うつ薬で改善した段階以上に症状が良くなる可能性があったりすることも言われているようです(Fava, Psychol Med, 2007)。