現在、摂食障害の低体重で通院中です。体重が減ってから髪の毛がたくさん抜けるようになってしまいました。このままではハゲてしまうのではないかと心配しています。摂食障害の症状で髪の毛が抜けることはありますか?また、そうだとすると何が原因で抜けるて、それは治るのでしょうか?
摂食障害(神経性食欲不振症)では髪の毛の抜け毛が多くなることはよくあります。特にこの病気では若い女性が多いため訴えとしてもよく聞かれます。主に栄養不足が原因となります(詳細は後述)。また、これらの栄養を摂取することで抜け毛の症状は治りますが、栄養を補ってすぐに改善するわけではありません。
十分な栄養を取って体重が戻ってしばらくしてから徐々に髪の毛が安定してくる場合が多いです(場合によっては数ヶ月)。
摂食障害では高率にタンパク質の摂取不足が見受けられます。タンパク質の摂取不足は脱毛と関連しており、髪が細くなり、弾力性がなくなり乾燥しているような状態になります(McKenzie CA 2007)。
また、健康な毛髪を効率よく生産するためには、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどの必須栄養素が必要とされています(Almohanna 2018)。
鉄欠乏は抜け毛の多い方によく見られる症状となっています(Gowda D 2017)。また、摂食障害でも非常に多くの方が鉄欠乏の状態です。なので、まず鉄欠乏性貧血がないかということや血清フェリチン値(貯蔵鉄の目安)を確認することが大切です。鉄はレバーや赤身の肉、ホウレンソウなどにも多く含まれていますね。

亜鉛欠乏も摂食障害でよく見られ、脱毛と関連しています(Alhaj E)。亜鉛の主な摂取源は魚と肉です。
ほとんどの場合、バランスのとれた食事でビタミンAは充分取れるとされています。ビタミンAを多く含む食品には、バター、マーガリン、チーズ、卵、レバー、緑黄色野菜などです。なので、しっかりと食事が取れていれば心配する必要はないですし、サプリメントなどで過剰なビタミンAを取ってしまうと逆に抜け毛の原因にもなるようです(Shmunes 1979)。
ビタミンBは様々な種類がありますが、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB7(ビオチン)、葉酸、ビタミンB12の欠乏のみが抜け毛と関連していると言われています。 これらは普通のバランスの取れた食事をしていれば基本的に問題ないですがビタミンB7はタンパク質にも多く含まれているため摂食障害などでタンパク質が不足している場合には要注意ですね。葉酸欠乏は、毛髪、皮膚、および爪の変化を引き起こす可能性があり基本的には普通の食事で十分量摂取できるのですが、摂食障害では不足している場合も多いため要注意です。
ビタミンCは、鉄の腸内吸収に重要な役割があるので、ビタミンCそのものというより鉄欠乏が脱毛に関連しているためその補助のために重要です。ビタミンCはレモン・キウイなどの果物、パプリカやブロッコリーなどの野菜にも多く含まれています。
