精神医学情報

アキスカルによる双極スペクトラムの分類について

双極性障害いわゆる躁うつ病は非常に幅広い概念であり診断も難しい場合が多いです。

というのも、長年うつ病の診断だった人がある時、躁状態を認め双極性障害と診断が変わることも多々あるからです。

また、うつ病の方が抗うつ薬で躁転することもあります。これは双極性障害と言っていいのかという点も悩ましいところです。

アキスカル(Akiskal)が幅広く双極性障害を取り、整理し分類しました。彼は1983年にまず双極性障害を4型に分類し、その後1999年に7つの型に双極スペクトラムに発展させました。

その7つに発展させた論文が古典として有名なのですが、これは論文としてはやや長いですし(20ページ弱)読む機会も少ないと思うので少し説明しようと思います(Akiskal 1999)。

Dr. Hagop Akiskal

双極性障害Ⅰ型について(躁うつ病)

双極性障害Ⅰ型は躁うつ病の中でもしばしば妄想といった精神病を伴う激しい躁状態に陥る状態を伴ったものを言います。論文に掲載されている症例を紹介します。

「18歳の時にうつ病で発症した男性。市販の睡眠薬の過剰摂取や飲酒量も多く、自傷行為もみられた。また家族歴としては父親が双極性障害だった。約20年の間に6回のうつ病エピソードがあったそうだが、いずれも抗うつ薬の効果は今ひとつだった。その後、37歳のときに初めて躁病エピソードが出現した。数日眠らなくなり、ノンストップで活動し、多幸感、「ドン・ファンの子孫」であると信じる妄想も出現した。バーに通い、お酒を飲み続けたり風俗に通い続けたりしていた。治療としてはリチウムの内服でやや落ち着いた。」

ここでは躁病エピソードが出現する前の段階でも下記の3点から双極性障害が疑われると書かれています。

(1)躁うつ病の家族歴

(2)抗うつ薬の効果が認められなかったこと

(3) うつ病エピソードの間でも持続し、リチウム治療によって軽減された性欲の存在

などからもうつ病の段階で双極性障害が疑われる要因だったと書かれている。

 

双極性障害Ⅰ1/2型について(遷延した軽躁をもつうつ病)

双極性障害Ⅰ1/2型は、長期化した軽い躁状態を伴ううつ病のことを言います。

「45歳の男性。父親は双極性障害で自殺の家族歴がある。本人は治療抵抗性うつ病であり抗うつ薬には反応しなかった。あるとき、どんな女性も手に入れられるのではないかと言った万能感が生じ、5ヶ月間ノンストップでバーに通うなどの過活動な行動が見られた。その後は気分安定薬で一旦落ち着き再度抑うつ状態に戻った。」

このように数ヶ月間と長期化した躁状態を伴うベースとしてうつ病のある状態を言います。

 

双極性障害Ⅱ型について(自生的で明瞭な軽躁病相をもつうつ病)

これは中等度から重度の障害を伴ううつ病を有し、顕著な障害がなく少なくとも4日間以上の軽躁状態が散在している状態を言います。

「38歳の女性。10代の半ばで過眠傾向のあるうつ病を患っていた。ベッドからもなかなか出られない日も少なくなかった。また、年に数回、彼女は眠らなくても大丈夫となり、性欲が増え、喜びや自信に満ち溢れ、仕事と私生活の両方で活動的となるような期間が数日から数週間続いた。バツ2で3回目の結婚をしたところであった。リチウムなどの気分安定薬で落ち着いた」

これはⅠ型とも似ているが躁状態が軽いか重いかの違いがあります(ここでは軽い方です)。ただ、アキスカルも軽躁状態とⅠ型で見られるような重い躁状態との線引きは難しいと言っており、Ⅰ型の目安としては下記のようなものがあると書かれています。

・会話が理路整然としていない

・高揚感のようなものがあり、それが閉ざされた瞬間に攻撃的になる

・誇大妄想のような妄想が生じている

・客観的に物事が見られず社会生活に支障をきたしている

 

双極性障害Ⅱ1/2型について(気分循環性うつ病)

軽躁状態がⅡ型だと4日以上という定義であったが、それよりも短く3日以内の場合もあります。また短いため、そこにうつ病エピソードが重なることがあり、非常に気分が不安定のようにうつるという点が特徴的なようです。このような気分が不安定な例はしばしばDSMでは境界性パーソナリティ障害に分類されています。

「24歳の女性。ある時にハイで活動的になったと思いきや元気がなくなりずっと横になる。時にはこのような状態の入れ替わりが毎日のように起こっている。彼女は年に2回、春と秋に1ヶ月ほどのうつ状態を認めた。春にはイライラや落ち着きのなさ、性欲過多であったり、秋には寝過ぎと過食が特徴であったりした。抗うつ薬には反応しなかった。過食や自傷行為をすることもしばしばあった。母親は4回離婚歴があり、父親はアルコール多飲傾向があった。」

このような例は境界性パーソナリティ障害として扱われることが多いが治療の面でも双極スペクトラムに入れるべきという点がアキスカルの主張です。

 

双極性障害Ⅲ型について(抗うつ薬によって起こる軽躁)

軽躁病および躁病エピソードの中で抗うつ薬の治療中に起こることがしばしばあります。いわゆる抗うつ薬による躁転ですね。抑うつ的な性格もしくは早発の気分変調症の特徴があり遺伝性はそこまで強くはないとの特徴があるようです。

「悲観的な47歳女性の教師。彼女は悲観的で暗かったが、生徒からは人気があり思いやりがあった。娘が家を出たことが引き金で抑うつ的になり、絶望感や罪責感で悩まされて過量服薬による自殺未遂を行った。その後、抗うつ薬にも反応しなかったが、抗うつ薬であるMAO阻害薬を使用した後に4日間の多幸感を伴う軽躁状態が認められた。」

 

双極性障害Ⅲ1/2型について(アルコールや違法薬物などによる双極性障害)

これは抗うつ薬ではなく、アルコールや違法薬物などの物質乱用に伴って起こる軽躁や躁病エピソードです。

「29歳女性ジャーナリスト。彼女は長年コカインやアンフェタミンといった違法薬物の常習者であった。父親に双極性障害の家族歴があった。彼女が薬物を絶った後に激しい不安、パニック発作などを伴う抑うつ状態となった。抗うつ薬は効果がなかった。その後、デパケン、トピナといった気分安定薬で改善した。」

 

双極性障害Ⅳ型について(発揚気質のうつ病)

生涯にわたる意欲、野心、高いエネルギー、自信、そして外向的な対人スキルといった発揚気質がベースにあり、その中で抑うつ症状を認めます。これは典型的には50代の男性が典型的で比較的高齢で起こります。

「53歳の弁護士の男性。短期間で法律事務所のトップに昇りつめた。彼は4時間以上の睡眠を必要としたことがなく、常に多くの仕事をこなしていた。彼は頭が良く雄弁な話し手だった。アルコールも多く飲んでいた。心臓の冠動脈の手術の後から自信がなくなり抑うつ状態となった。ベッドからも出られなくなり、出勤も困難であった。 抗うつ薬で治療するも改善は乏しかった。その後、デパケンといった気分安定薬で症状は改善した。」

このタイプの方は短期間ではなく多かれ少なかれ生涯にわたり活動的であることが特徴であり、その途中でうつ病を発症してしまうという点が特徴的です。

以上がアキスカルが分類した7つの双極スペクトラムの型です。アキスカルはDSMでうつ病と診断されている方に双極性障害が多く混ざっているということを強調され治療のためにもきちんと見分けることが大切だと主張されています。

Dr.おもち
Dr.おもち
たしかに、うつ病の3-5割は治療抵抗性で後に双極性障害と診断が変わる方も現在でも多く見られます。なので、このように幅広く双極性障害を取り、見逃さず治療を行うという考え方は大切ですね。

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