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質問No.26:睡眠薬は認知症のリスクになりますか?

質問No.26:睡眠薬は認知症のリスクになりますか?

 50代女性です。眠れない日が多く、毎日睡眠薬を飲んでいます。最近では睡眠薬がないと全く眠れません。しかし、少し前に睡眠薬はお酒と似ており、飲み続けると認知症になるよという話を聞きました。これは本当ですか?

回答

睡眠薬には主にベンゾジアゼピン系の薬が使われています。これは不眠以外にも不安症状などに用いられますが、副作用として記憶が無くなったり、認知機能が低下したりするという話もあり認知症との関連もあるのではないかと言われていました。

ただ、最近ではベンゾジアゼピン系の薬剤は直接的には認知症のリスクにはならないという説が一般的です。

一方で、これらの関連を正確に見ることは非常に難しいため検証は中々困難でありまだ研究の余地はありそうです。というのも認知症自体に不眠や不安などの症状が先行して起こることも少なくないため、

「元々認知症の前駆症状で不眠や不安があり、それに対して睡眠薬を使った」

or

「睡眠薬を使ったから認知症になった」

の区別が困難であることや、前向きで長期経過を追うにも認知症になるまでは非常に時間がかかってしまうなど中々適切な研究デザインを立てられず因果関係が分かりにくいことがあります。

ここでひとつ有名な研究を紹介します。

平均74.4歳の3434名を対象にした研究です(Gray 2016)。研究開始時点までの10年間でどの程度のベンゾジアゼピン系の薬剤を使用したかを調べています。ここで用いられている数値は1日量(ベンゾごとに処方された総量を一般的な1日最小有効量で割ったもの)の合計として算出。それを全く薬なし(2416名)、TSDD1-30(492名)、31-120(259名)、121以上(267名)と分けて比較しています。ちなみにTSDD121以上とは10年間で標準的な量の睡眠薬を121日以上使っているという意味です。

その後、約7.3年間追い、認知症を発症したかを調べています。その結果、797人の参加者が認知症を発症し、そのうち637人(79.9%)がアルツハイマー病を発症しました。その中でTSDD121以上のようにベンゾジアゼピンを多く使っていたグループは使っていなかったグループと比較して認知症、アルツハイマー病になるリスクは上がらなかったとなっています。

TSDD365とかなり多く使っていたグループを分けてみても有意に認知症のリスクが高くはなりませんでした。また、認知機能の低下とも関係はしていなかったようです。

また、ここでは少量使用の場合、ほんの少しだけ統計的に認知症のリスクが上がったとなっていますが、ほんの少しなので偶然かもしれないですし、認知症の前駆症状での不眠だったのかもしれません。

 

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