これまでの新型コロナウィルスCOVID-19の重症化リスクとしては高齢であること、男性、心血管疾患、糖尿病などが言われてきました。ただ精神疾患があることがどの程度リスクがあるのかはこれまであまりわかってはいませんでした。
ニューヨーク大学のグループが新型コロナに感染した成人の精神疾患と死亡率との関連を評価した報告がJAMA Psychiatryにありました(Nemani 2021)。
ここではPCR検査で陽性の方を対象として45日間追っていき、重症化するかどうかを見ています。そしてその重症化した方で精神疾患ありの場合はそうでない人たちに比べて重症化率(死亡orホスピスに転院したかで見ています)が高いかどうかを調査しています。
対象はニューヨークの病院で26540人のPCR検査を行っています。そのうち7348人(27.7%)が陽性であったようです(女性3891人[53.0%]、男性3457人[47.0%]、平均年齢(SD)は54歳(18.6歳))。
この検査結果が陽性の対象者のうち,統合失調症スペクトラム症の既往歴を有する患者は75例(1.0%),気分障害は564例(7.7%),不安障害は360例(4.9%)でした。
45日後の転帰を追ったところ7348人の陽性者のうち、864名が45日以内に死亡もしくはホスピスに転院したそうです。
統合失調症スペクトラムの方は、そうでない方と比べて重症化率が2.87倍と高くなりました(OR、2.87;95%CI、1.62-5.08)。また、基礎疾患などの医学的危険因子で調整した後(OR、2.67;95%CI、1.48-4.80)と調整後も有意に高かったようです。一方で気分障害群や不安障害群では有意な関連はありませんでした。
このニューヨークで行われた大規模な調査では新型コロナ検査陽性の成人を対象とており、統合失調症スペクトラムの診断を受けた成人は,年齢や性別、人種などの因子と糖尿病などの医学的危険因子を調整しても死亡リスクが有意に増加することがわかりました。
では、なぜ統合失調症スペクトラムの方で死亡リスクが増大するのでしょうか?これに関してははっきりとはわかっていませんが、論文内では、統合失調症は炎症のサイトカイン伝達異常が言われておりそれによって重症化しやすくなるのではないかと言われています。また他には統合失調症の方は社会的な孤立などであまり病院にかからないため重症化するまで受診しない方の率が高いのではないかとも言われています。