精神医学情報

大麻は安全なのか、リスクについて

ここ最近、いくつかの国で大麻が合法化されたこともあり、大麻を日本でも合法にしたらいいのでは?というような話をしばしば耳にします。日本では多くの国と比較して大麻を使用している人数は少ないため、外来で大麻依存の人をみる機会は幸いにも多くはないです。大麻といえば、以前オーストラリアを旅行した際に大麻依存の人がたくさん住んでいるヒッピーの村を通りがかったことがあります。その際にぼんやりと路上に座り大麻を吸いながら、独り言を言いながらぼーっと過ごしている人がたくさんいたことを覚えています。もともとだったのか?大麻によって変化したのか?などなど気になりました。

現在、世界中で約2億人の人が大麻を使用していると言われています。すごい数です。カナダ、アメリカの一部の州のような合法の地域もありますが、多くが違法の国での使用のようです。アメリカでは合法化の流れもあり2001年から2013年までの間で大麻の過去の使用歴は約10%から20%と倍増しており、カナダにおいては15歳から19歳で2015年で過去の大麻の使用経験は約2割に及ぶそうです。

近年、日本でもその一部で大麻の利点と合法化について支持する意見も度々聞かれます。アルコールやタバコほど害はないのではないかという点が一部で言われていますが、この比較はやや論点がずれてしまう気がします。アルコールやタバコを禁止にして大麻を合法にするならば比べる意味があるのですが、どちらも害であるならばこれ以上悪いものを増やすことは望ましくはないでしょう。私が精神科医ということもあり、大麻の精神疾患や認知機能への影響はどうなのかいくつかみてみます。

アメリカ国立衛生研究所(NIH)のNora D. Volkowのレビューに認知機能やモチベーション、精神病症状と大麻の使用について書いてあります(Volkow 2016, 2018)。即効性の効果としては大麻の使用によってドパミン機能に異常が生じ物の見え方が鮮明になるなどといった研究結果があるようです。長期間の使用についてはより問題であるそうです。あるメタアナリシスによると大麻の使用者は未使用者に比べて有意に認知機能が落ちていることがわかったそうです。若年で大麻の使用を始めると、年を取った際に認知機能に悪影響がありそうです。ただ、若い時にすぐ影響が出るというわけではなさそうです。10代のような若い時点では大麻の使用状況とIQとの関連ははっきりとはしないという研究もあります。1989人の双子を追った縦断研究があります。18歳の時点で大麻の使用状況とIQとの関連をみました。その結果によると18歳の時点では大麻の使用とIQの低下とは関連がみられなかったとなっています(Meier 2017)。また、大麻の使用はやる気などの低下にも関係するのではないかということも言われており、これも様々な研究で示されています。ミシガン大学の脳機能を測定したfMRIの縦断研究によると金銭的見返りを得るゲームにおいて大麻を頻繁に使用するものは年々、金銭に対する脳の側坐核の反応が薄くなってしまうようです(Martz 2016)。

精神病(統合失調症様の陽性症状や陰性症状)発症のリスクもありそうです。特にヘビーユーザーであること、開始年齢が早いこと、THC(テトラヒドロカンナビノール:大麻の主な有効成分)の含有量が多いことと精神病症状との関連は強いそうです。大麻の使用経験がある場合は2倍ほどに統合失調症様症状の発症のリスクが増え、継続して使用した場合6倍になります。McGill大学が行った縦断研究のみを集めたメタアナリシス(Gobbi 2019)では、11スタディ行われており、うつ病発症のリスクは有意に上がるということが示されました(ORで1.37)。不安障害では大麻との関連はないものの、希死念慮や自殺企図でも有意に関連があることが示されています。

最近のレビューをいくつか見てみましたが、大麻の使用は長期的に認知機能や精神疾患への影響はありそうですが、その因果関係については不明な点が多いようです。そのため因果関係を推測するためには前向き研究が重要ですが、大麻の長期使用への影響に関する前向き研究はまだまだ数は少なく実施することも困難と言えそうです。それも当然で「大麻の影響を知りたいので、長期間大麻を吸い続けて下さい」と言ったところで研究のために犠牲になり長期間吸い続けましょうという人はなかなかいないですし倫理的にも問題です。そのため研究がやりにくいといえます。

結論を言うと、大麻の精神疾患への悪影響は現時点では研究が不十分でなく結論が出せないと言う点と、今あるデータからでは精神疾患への悪影響はそこそこありそうと言えそうです。

 

 

 

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です